大津絵の世界

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大津歴史博物館で開催中の「大津絵の世界」展を見に行ってきた。大津絵という伝統絵画を漫画と一緒の書庫に入れるのは少しためらいがあるが、往時これを求めた人々はおそらく現在の我々が漫画を買って読むような感覚だったと思いあえて漫画の仲間に入れておく。

 

大津絵は地元ではともかく全国的に見て美術品としての正当な扱いは受けてこなかった。そもそもは中世の頃仏教布教のための宗教画として始まったものだが、江戸時代に大津の土産物として街道を行く人を相手に安価に大量に売り出して広まった。例えばTDLUSJで売ってるアニメキャラや東京ドームや甲子園で売ってる選手キャラあるいは観光地のタレントショップのグッズを買い求めるようなものだったのだろう。絵は大津絵特有のキャラクターというのが多く独自性を出していたと思う。それも庶民に親しまれやすいような図柄で歴史上人物、動物、鬼など愛嬌のある表情だ。ディズニーアニメに出てくる悪役キャラがどこか憎めずある点においては道化ですらあるかのように、大津絵の鬼は何かユーモラスだ。

 

鬼が念仏を唱える絵がある。私はこれを「鬼のような者でも念仏を唱えれば極楽へ往生できる」といういわゆる悪人正気説を教えたものかと思っていたが実は「念仏を唱えていてもその心が鬼のように慈悲を持っていなければ救われない」という当時の宗教者達の儲け本意を皮肉ったものだった。このように当時の世俗への皮肉・風刺が、幕府の御政道への批判を禁じられていた庶民に受けたのだろう。

 

そのような性質の絵だから時事を過ぎると「賞味期限切れ」になって古くなった少年漫画雑誌のように捨てられていってあまり残らなかったのだろう。そう考えればこの展覧会で270あまりの作品が集まったのはよく残っていたなあという気にさせる。これを機に現在に受け継がれて現代の大津絵アトリエなどできればと思う。

 

4月16日まで