すすめ!!パイレーツ

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この江口寿史の作品が世に出たのが1977年でそれから3年ほど少年ジャンプに掲載された。この書庫に前掲の「がんばれ!!タブチくん」と同時期だがこちらの方が少し早く野球漫画が熱血スポ根モノばかりではなくギャグモノもできることを初めて示したのはこちらが先と言うことになる。いしいひさいちが実在の選手や球団を冷やかすようなスタンスだったのに対し江口はありえそうもないキャラを登場させいかに野球界をナンセンスの坩堝と化すかに心血を注いでいたような印象を持っている。本作品の中にも長島、広岡、江川などの実在人物がときに登場しているが彼ら自身がギャグ的存在なのではなく、パイレーツの濃いキャラとの対比で笑いを導く役回りに留まっている。千葉農協会長の九十九里吾作氏の鶴の一声で千葉県人の球団を作ることになったと言うのが国鉄職員の健全な娯楽のために国鉄スワローズを作った経緯を彷彿とさせる。当時千葉と言うと田舎のイメージが強かったのだろう、まさか千葉に野球球団ができるなど誰も想像し得なかったのでその発想そのものがお笑いとされた。登場人物も犬井犬太郎と猿山さるぞうなんてどこかそれとなく田舎を笑いのネタにしているネーミングである。その二人を軸に他に粳寅満太郎、千葉修作、ジェロニモ、稲刈真青、獅子丸それに富士一平と江原卓徳などのメンバーが回ごとに話を盛り立てる。私の気に入りは粳寅満太郎で、粳寅組2代目という生い立ちなのにパイレーツに入団して笑いの世界に引き込まれるところが憎めず、強面の出で立ちがサングラスを取ると少女漫画の目というのがかわいい。満太郎を初めとしてこの漫画にはあちこち他作品のパロディーが導入され、今読むとここまでやっていいのと思えるきわどい笑いもあるがそれもこの作品の見所と思う。

 

昨年パリーグに新しく楽天ゴールデン・イーグルスが参入したが、このチーム負けっぷりがよくて去年はぶっちぎられて堂々の最下位。監督の変わった今年も今のところ他とは引き離されて苦戦している。漫画で貧乏球団千葉パイレーツのライバルとして金満球団東海イーグルスという名が出てくる。親会社楽天は確かに金満企業であろうが球団の状況はまさにパイレーツのイメージとダブる。一場投手などさしずめ江原卓徳のように思えてならない。いっそ楽天パイレーツとしたほうがぴったりくるなあと往年の江口ファンは思ってしまう。