忘れる技術

イメージ 1

 

入試や資格試験を受けるのを控えている人には忘れるなどとんでもないと思われるだろうが、世の中には忘れたくても忘れられない過去に縛られて苦しんでいる人たちがいる。普通の記憶は時がたてば薄れていく、機能的にはそれが正常なのだ。年とともに忘れることが多くなっていく、それも普通のことなのだ。しかし過去のある時点で自分の身に降りかかっていつまでも消えない記憶が身体的に悪影響が出ることがあるならばそれは病的な記憶である。よく知られるのはPTSDであるが、その原因となるのは突然フラッシュバックする「外傷記憶」と呼ぶ悪玉の記憶である。そのとき心臓の鼓動、脈拍が高まる、血圧が上昇する、手が震える、ゆれる感じ、吐き気、痛みの再現、などさまざまな異変が起こる。それがいつ起こるかも予測がつかず本人もコントロールできない。そのような記憶は取り除いて忘れるべきものであるが、それには特別な知識と技術を用いることになる。その方法を精神医学的に説明した著書である。約10の技術が記されているがいずれも忘れようとする人のそれなりの決意がいる。「外傷記憶」は不条理な発現をするのだから不条理に解決しようとしても出来ない。理性的に対処するには記憶をこうむった相手との心の貸借関係を図式化しバランスシートを図式化することで糸口がつかめるというのは卓見であろう。その不均衡を無くすようにしていけばよいのだが、人はどうしても借方を過小に貸方を過大に評価する傾向がある。その差を0に近づけるには相手の立場の理解が重要であろう。

 

外傷記憶を忘れられたら脳に大きな空きスペースが出来てそこにまた違った良い記憶を次から次へと詰め込むことが出来前向きになれることであろう。