今年よく読まれた本の1つで100万部近い売上だったという。
東京農工大学内にある生協で、利用者からのアンケート(
ひとことカード)に寄せられた質問・意見に対して生協職員・白石さんがに回答した事例をまとめた本である。各ページ上に質問・意見、下にそれへの白石さんの回答が書かれておりその当意即妙さに唸りながら次々と読み進んでいくことになる。あっという間に読み終えてしまった。昔なら
大学生協というと
共産党寄りの組織らしく学生との対話は
イデオロギー論争を丁々発止繰り返す場によくなっていた。そんなイメージで読み出すとこけてしまう。本来
ひとことカードは生協の運営や営業に対する提案・質問・意見などを聞くためのものだろうし、大半の投書はそれに沿ったまじめなものだったろう。どんな投書にもユーモアとウイットに富んだ対応をしてくれる白石さんに対し、学生達がこんな質問なら白石さんはどう答えるだろうかと面白がって軽いノリの投書が増えてきたのだろう。いや、取り留めのない質問に白石さんがまじめに回答されるのを面白がっているという方が正しいか。まあこのような受け答えは
大学生協という事業体だからこそ成立する一種の笑いの共有であり、勉学に追われる学生には自分達も参加できるコミニケーションの場として貴重なものとして楽しんでいるようだ。そのホンワカした雰囲気を読み取るのは「癒し」にはなるだろう。でもこの程度のコミュニ
ティーは本来どこの地域社会にでも存在すべきものなのに、現代はその存在が失われつつあるからこういうものが本になって喜ばれるのだろう。そういう意味では冗談が通じにくくて憂慮すべき時代である。デパートやコンビニでもこのような受け答えが出来る世の中になって欲しいものである。