1972年といえば日本の鉄道100周年を迎えた年で特に鉄道記念日の10月14日前後は各地でさまざまなイベントが催された。
奈良線はその前年に蒸気機関車の運行が終了してDLが貨物運用についていた。しかし100周年で久しぶりに蒸気機関車が走るらしいと噂が流れた。10月10日(休日)に京都から蒸機の引くミステリー列車が出発してそれがどうやら奈良線を通るというものだった。こういう噂はどこからとなく流れてくるがやはり部内からのリークであろう。
当日宇治川べりまで行ってみたが、やはり噂を聞きつけてか多くの人がカメラを構えて立っていた。まず露払いのようにDCの定期普通列車がやってきたので試し撮り。天気は今ひとつだがまあうまく撮れるだろう。そしてやがて真打登場。奈良区のD51が旧型客車8両を引いてやってきた。除煙板に鳳凰が描かれている。平等院のある宇治を通るからの配慮だろうか。まるでお召し列車のようだ。橋を渡りきる直前でいっせいにシャッターを切る音が響いた。
1972.10.10