お年寄りの喫煙

最近の公的スペースの禁煙の動きは多方面に及んでいる。それは喫煙がガンや生活習慣病になる誘因であるというのが主な論拠であろう。吸った人本人だけでなくいやむしろ周囲で副流煙を吸い込んだ人にも害が及ぶという。また昨今の二酸化炭素削減の動きも喫煙に対して圧力をかける。

現在の世の中、タバコのパッケージにまで健康への危害をアピールする文が書かれているだけに体に良いと思って吸っている人はまずいないと思う。しかしよく考えてみると一体どのくらいの量をどのくらいの期間すい続ければ発ガンするのか明確なデータはどこにあるのであろうか。タバコを吸い続けていた人が肺がんの診断を下されて亡くなったとしても原因は喫煙だけに求めるのはやや飛躍があろう。お年寄りになっても吸い続けている人がいる。

90歳を過ぎいろいろな病気を抱えて寝込むことが多くなってもまだタバコを吸い続ける人がいる。食欲が落ちあまり食べなくなってもタバコを一定量毎日吸い、それでも体調は維持している。タバコは加齢による摂取量の減少はないのだろうか、そして仮に摂取量が減ったとしたら体調は向上するのだろうか。
この人は毎週1回デイサービスを利用していたがその施設が今年四月から全面禁煙になり施設内の喫煙ができなくなった。これによりこの人は楽しみを取り上げられた気分になり最近はデイサービスの利用を拒否しているということである。多数の健康への配慮とはいえこの人にとって生活の一部であった喫煙習慣を取り上げられたのはむしろ不健康な仕打ちに思える。これにより利用拒否が続き社会から隔絶されていくのであればデイサービスの目的に適うものではないだろう。率直に言えばここまで生きてこられた人に今更タバコの害を説くのに説得力があるだろうか。後の残された人生がたとえ健康に送れるようになれたとしても長年の嗜好を取り上げられて人権は尊重されているのだろうか。

お年寄りの喫煙習慣のもう一つの問題として認知レベルの低下により火の不始末がおこる可能性が挙げられる。でも火災の危険性とお年よりの喫煙の是非は別問題ではないだろうか。厳格に危ないから禁煙しなさいというのが通るなら冬に暖房を使ってはいけませんという論理になる。もっとも確かに一人でいるときに喫煙する方が火災のリスクは大きくなるだろう。ならば見守りの目が届き万一の場合にも適切な対応がとれる公共のスペース(この場合デイサービスなど老人介護施設)でこそ喫煙を容認する方が安全で人権の尊重につながるものではないかと考える。