兵庫県立美術館・名画100年美の競演を見て

多数の日本近代美術作品を擁する神奈川県立近代美術館所蔵の絵画と兵庫県立美術館の所蔵品とをあわせてこの100年間の近代美術作品を展示する催しが行われた。副題に「麗子登場!」と銘打ってあり岸田劉生作の「童女図・麗子立像」が目玉となっている企画である。彼のほか高橋由一藤田嗣治片岡球子小磯良平らの作品が出そろった。閉幕の迫る7月18日観覧に行った。

 

美術館最寄り駅は阪神岩屋駅
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京阪中ノ島から福島まで歩きそこから阪神に乗ったけど岩屋に着くまでに阪神ばかり4回も乗り換えた。普通、急行、快速急行直通特急すべてに乗れた。この駅で美術館の前売り券を販売していた。現地より200円安いので購入。美術館までは徒歩8分。

 

HAT神戸にある兵庫県立美術館
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美術館のほか各種公共施設や商業施設が並ぶ神戸市東部湾岸地域にある。駅から歩いてくると麗子像が目に入りすぐわかる。広い美術館で同時期に「レンビッカ展」というのも開催されていてそちらのほうが多くの観客を集めていた。「麗子」のほうは待たずに入れた。

 

ほぼ年代順に明治、大正、昭和戦前、戦争期、昭和戦後の作品が並べられ日本美術が時代の影響を受けながら発展していったのがわかる。明治期いち早く西洋油彩画に感化され日本洋画を確立したことは脱亜入欧・富国強兵の時代に適ったものであった。同じころヨーロッパで日本の浮世絵に感化され印象派ジャポニズムが広がったのと好対照である。大正期は風景・人物・静物などさまざまに描かれた。岸田劉生の「麗子像」を初めとしてよく知られた作品がこのころ作り出された。しかし劉生が描いた麗子像はさまざまなバージョンがあるはずで「麗子登場!」と銘打った以上それらを一同に会して見せてほしかったと思ったのは私だけではあるまい。

 

昭和に入ると遥かな憧れだった欧米へと渡る若き画家たちが現れ自分の目で見た異国の情景を作品に託すようになった。藤田嗣治などはかの地で認められそこで骨を埋めた。また写実主義一辺倒からキュビズム、シュルレアリズム、モダニズムなどを取り入れて作品の多様性をもたらした。この作品はピカソ的、マチス的、ダリ的、などと類推するのも面白い。このような多様な花開く時代であったのもつかの間、やがて時代は戦争へと突入し画壇も当局からの圧力を受けるようになる。さて須田国太郎作の「工場地帯」という作品だがフリップによると宇治の工業地帯とあるのだが見ると煙突の立つ工場の横に二つの川が合流しその手前に架線柱のある鉄道路線が描かれている。その地形からわが地元である京阪宇治線観月橋桃山南口宇治川山科川合流点の地点ではないかと思える。現在その場所に工場など跡形もなく多くの住宅が立ち並ぶが、その昔軍需工場があったと聞く。詳細を知る人がおられたらご教示願いたい。

 

戦後というと戦争の重苦しさから抜け出して自由な作風が生まれたかと思いがちだが芸術を通して悲惨な戦争体験や戦後の混乱を表しているものが多いことに気づかされる。どちらかといえば暗くそこから出発した時代を私たちは今受け継いでいるということを感じさせて展示は終わる。

 

それにしても神奈川近代ほこれはという名作を多く所蔵していることに驚く。今度はぜひ現地へ赴きたいと思った。この企画展は好評のうちに昨日19日に終了した。