姫路モノレール跡

昨年整備されて公開された姫路モノレールの車両と市街に点在する軌道跡を見てきた。

 

山陽電鉄を姫路から一駅戻った手柄駅で下車。西へ徒歩約10分にある手柄山中央公園内にある「手柄山交流ステーション」の建物の中に保存されている。この建物こそがかつてモノレールの手柄山駅駅舎だったものだ。その2階がホーム跡で現在モノレール展示室となっている。
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①姫路駅側から見た車両。2両連結されている。現役時は4両在籍していたがこの2両だけ現存。
②反対側車端。行き止まりになっているが現役時は引き上げ線として線路がさらに延びていた。運転室に帽子を取って息抜きする運転士の人形がある。客室内にも人影が見えるがそれも人形。
③客室内。姫路駅側の車両は車内立ち入りができる。固定クロスシートが並んでいる。もう一両のほうには立ち入りできない。
実車部品とともに姫路モノレールの技術がパネル展示。今やここでしか見られないロッキード式跨座形モノレールについて解説。また日本・世界各地のモノレールを紹介するコーナーもある。

 

その交流ステーションの傍から見た姫路市
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写真中央にモノレール軌道跡が見える。廃線後すでに30年以上経っているが費用が膨大なため撤去が進まずかなり残っている。

 

では公園を出て軌道跡に沿って姫路駅まで歩くことにしよう。

 

JRとの交差部付近
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現役の頃新幹線をアンダークロス、在来線をオーバークロスしていた。現在は在来線も高架になっているのでその部分の軌道跡は撤去されている。

 

草木に埋もれる軌道跡
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放置に任せておけば自然に帰っていく。熱帯樹が伸びてきているのはシュールな光景。

 

中間駅 大将軍駅
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ビルの3階に駅を設けその下は商店、その上は住宅という構造になっていた。しかし利用客が少なく開業2年くらいで客扱いを停止して通過となった。耐震設計になっているのだろうか。現在ビルそのものも使われていない。

 

山陽電鉄との交差部付近
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大将軍駅から先はほぼ直線に姫路駅まで続き駅に近づくと線路敷を利用して商店が建ち並ぶ。モノレールの運行は18時には終了していたので騒音が問題にならない夜の商いが主だったようだ。猫の額のようなところで山陽電鉄を跨ぐ。

 

姫路駅前
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山陽姫路駅の南側にモノレール駅はあったのだがもはや何も残っていない。今その跡に掛けられている歩道橋から西方向を眺める。軌道や大将軍駅跡がここからも望める。

 

完成当初はさらに延伸し姫路市内を環状に運行するという壮大な計画も立てられたが、その後の政策、財政、技術各面から様々な問題が起こって運行休止に追い込まれわずか8年の営業を終えた。このモノレールが生まれた1960年代の人々は皆右肩上がりの成長を信じインフラの整備が進められた。今私たちはその夢の跡を見るのだが、その空しさを嘆くよりは新たな出発を考えることに時間を使う。
今後日本の人口は減り国力の低下が懸念される。東日本大震災の復興がまだ進まず脱原発の指針に伴い節電の必要性も言われている。そんな状況にあってもなお東海道ではリニア新幹線の建設が始まろうとしている。国民の多くは高速大量輸送の利便性を待望し景気浮揚を夢見る。私はそのことに異を唱える確固とした根拠を持つわけではないし同じ国民の一人であるに過ぎない。だがリニア新幹線が成功するという確固とした根拠もあるわけではない。姫路モノレールの失敗例は私たちに語りかけるものはあるにせよ結局人々が夢を追い続けることを止められない。

 

2012.5.6撮