映画「永遠の0」

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百田尚樹のベストセラーの映画化がこのほど封切られた。原作のスケールと感動の大きさが評判を呼び一年以上前から映画化の話が伝えられていて、映画もきっとそれ相応のものになると期待を集めいつ見られるのかと待ち焦がれた。この21日についに封切られてさっそく見に行って期待にたがわぬ出来栄えであったと感じた。

 

主人公の宮部久蔵に岡田准一、その孫で物語の語り手である佐伯健太郎三浦春馬、その姉慶子に吹石一恵、宮部の妻松乃に井上真央、その他風吹ジュン田中泯山本学平幹二朗橋爪功夏八木勲などそうそうたる出演者で固める。さまざまな立場ながら皆が揃って重い口を開いて始める戦場への回想は重複しつつも互いを補い合い宮部という男の生きざまが一見臆病に見えて実は強く優しい心身の持ち主であることを浮き彫りにしていく。橋爪功演ずる病身の井崎が淡々と語る言葉の重さは圧巻、引き込まれずにはいられない。

 

さてこの作品、広い世代の人が見るであろうが、先の大戦を実際に生き抜いた人にはどのように映るだろうか? その時代の描写にわが意を得る思いでありながらもその当時に宮部のような考えの人間がいたことに違和感を覚えるのであろうか? 確かに空中戦などの戦闘シーンは(もちろん特撮であろうが)今までのどんな戦争映画よりもリアリティーがあり往時を知る人の鑑賞に堪えうるであろう。それによりゼロ戦の戦闘能力を詳しく紹介している。だがその素晴らしい能力を持ちながら敵の激しい砲撃の前に相手にダメージを与えることなくあえなく太平洋上に散っていった多くの機体たち。これまで語られることのなかった特攻の実態が、情緒面にもまして戦略面でも生還することがいかに重要なことかを宮部の口から語らせている。宮部という人間はフィクションであるが、この映画の中で戦争を賛美するのではなく平和を築くためには先の戦争から私たちは何を学ぶべきかを問いかけているのだと思う。「生き残った者は死んだ者の死を無駄にすることなくその物語を受け継いでいかなければならない」先に亡くなった夏八木勲が役どころの大石賢一郎として遺言のように語っていたのが印象に残る。

 

よくできた映画で万人にお勧めしたいが原作を読んだ人のためにあえて言っておくならば、原作におけるある人物のセリフが映画ではほかの配役によって語られるところがいくつかあり幾分ずれた感じがしてその分その配役の性格が薄まっている印象を持つ。特に山本学演ずる元海軍中尉武田について。もっとも原作と比べたりしなければ何ら支障とならず楽しめる。

 

2013.12.26鑑賞