展覧会・北宋汝窯青磁水仙盆

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汝窯北宋時代の中国で焼かれた宮廷用磁器の一つで「天青」と呼ばれるほのかな青さをまとった青磁作品群である。「人類史上最高のやきもの」とまで呼ばれて珍重されているが完全な現存品は世界でも数十点しかない。その中で水仙盆と呼ばれる楕円形をした底の浅い容器は6点しか現存しない。そのうち台北国立故宮博物院所蔵の4点、大阪東洋陶磁美術館所蔵の1点が集まりさらに故宮博物院所蔵の清時代に汝窯を模倣して作られた1点も加えて計6点が一堂に会した。少ない点数と思われるかもしれないがこれだけが集まることは前代未聞なのだ。

 

6年前の展示では色合いや造形に感銘を受けたものだが完全なものが少なく一層の貴重さと神秘性を印象付けられたものだった。今回の展示品は完品が揃っていると聞きぜひ鑑賞したいと思って出かけた。とはいえ美術の中では広汎な分野でもなく点数も多くないことから来館者はそんなに多くもなかろうと高をくくっていた。正午過ぎに行ってみると建物の前に50人ばかり入場待ちの列ができていた。30分ばかり待ってやっと入場券を買い中でまた入室待ちの列に並んだ。この企画展の最終日だったこともあるがこの美術館で入場待ちをしたのは初めてだった。

 

やっと最初の展示室内に入ったらいきなりそこに目的の展示品6点がすべて置かれていた。あまり広くない部屋なので一度に30人くらいしか入れない、そのために入場に時間がかかったのだ。そこに全点置かれているのは見比べるには都合がよい。色合いや形や焼成具合など同じようだが目を凝らすと少しづつ異なるのが見えてくる。許される限りゆっくり時間をかけて観た。とりわけ中央に置かれている無紋水仙盆の神々しさは誰もが目を見張る。釉に貫入がなくそれだけでも美しさの極みだが青磁でこれほど微妙な淡い色合いを出せさらに形崩れもなかったのは奇跡のようだ。この作品を始めいくつかの作品の裏手には乾隆帝の御製詩が刻まれている。かの皇帝がこの器をいかに慈しんだかを知ることができる。その愛好ぶりにより景徳鎮で模倣作品を作らせたのだろう。当時の景徳鎮は世界的にもトップレベルの磁器を焼いていたのは疑いないがそれでも汝窯の持つ「深みのある淡さ」「広がりのあるまとまり」は真似できなかったようだ。いやはや貴重なものを見せていただいた。

 

2017.3.26訪問