津軽鉄道

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弘前から五能線に乗り川部を過ぎると見渡す限りのリンゴ畑の中を走って五所川原に着く。ここから津軽鉄道に乗り換える。硬券の切符を買い女性の駅員に手渡し入鋏してもらう。構内にはだるまストーブで有名な旧型客車が止まっていてそれに乗りたいのだが、乗るのは単行の気動車だった。別にどこへ行く目的もあるでなし。二つ先の津軽飯詰まで乗る。あっという間についた。小さな駅舎から外に出てみたが、小雨の中一本道が続く両脇は一面田んぼ。5分ほど歩くと県道に出る。少し行くと小さな食堂があった。ちょうど昼時、何か食べて帰りの列車が来るまでの間に腹ごしらえしようと思って店に入る。中年夫婦だけでやっている。先客は一人、もう何やら食べている。のんびりしたムードだが私にあまり時間はない。「何か簡単なものを下さい」というと「中華早いよ」と店主。それをたのむと5分ほどで出てきた。中華模様の丼にやや太めの麺、焼きブタ、めんま、ナルトが乗っている。割とあっさりした味。と、そこからは味わいの記憶はない。「あと15分で駅に戻らなくては。歩くのに5分は見ておかなくては」 柱時計ばかりに目をやりながらただ一目散に口に入れた。こってり味だったらこうパッパッと食べられないだろう。そそくさに食べ終えてまた駅へまっしぐら。程なく帰りの列車がきた。元国鉄キハ11だった2400型2連。白熱灯照る車内に入ってやっとホッこりすることが出来た。これに乗らなくては弘前へ戻るのが大幅に遅くなってしまうのだ。この穏やかな農村の昼下がりにせっかく来たのにもったいない。せかせかと中華をかき込んでいった私は食堂のオヤジさんに都会の慌しさを押し付けて悪いことをした。それもこれも…少しでも多くの列車に乗ろうとする鉄ちゃんの悲しい性。

ただ一度乗った津軽鉄道のほんの小さな思い出。1982年9月のこと。