熟練した治療者とは

治療者は五感を研ぎ澄まして全身全霊で患者に接するとここに鍼灸をしてくれと言う患者の体の叫びが聞こえてくる。微に入り細に入り話を聞かなくても詳細に触診をしなくても自ずとどこを治療すればよいのかわかってくるのだと思う。非常に観念的で科学的論証に欠けるとのそしりを受けそうである。でもノーベル賞の小柴昌俊さんが話している。「実験を長いことやっていると勘が冴えてくるんだよ」　科学の最先端を行く人でもよい結果が出るか出ないかは統計的処理をした数値を見るまでもなく自分の勘に頼るところが大きいようだ。科学と言うのは決して論理的考証ばかりで成立するものではない。もとより東洋医学の技術には近代理論による裏づけのない部分が多い。それでも鍼灸は効く。効く鍼灸をするには常に感覚を修練し自身の気を高めることが求められる。