阪神3561形

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オールドファンには阪神の電車の中で一番印象に残っているのはこの形式だと思う。前身の3011形は1954年阪神初の大型高性能車として颯爽と登場。国鉄80系急電の向こうを張ったような湘南顔でマルーンとベージュのツートンカラー。旧型小型車ばかりだった阪神に新風を吹き込み、クロスシートを設置して高速性能を向上させ乗り心地を改善しかつ阪神間ノンストップ25分運転を実現した。それまで国鉄や阪急に奪われがちだった阪神間の乗客を呼び込み乗客数を倍加させた。正に昭和30年代の阪神の顔だった。

 

けれど皮肉にも乗客の増加はこの車両の運用の不便さを露呈させ乗客増への対応が難しくなった。前面非貫通と2扉クロスシートは他系列との混用ができず支障をきたした。結局登場後10年で昇圧工事に伴って他系列との共通化改造されて3011の形式は消え3561形となった。

 

3011系は今見ても他の車両に比べて垢抜けしていてハイカラ好みの神戸っ子には好評だったようだが、私はその実物を見たことはない。ただ当時の鉄道雑誌で改造前と後の写真が出ていたのを見て思ったものである。よくもこれだけ形を変えたなあ、ずいぶんブ男になってしまったなあと。整形手術失敗? 塗色は普通の赤胴色。車体すそのRはそのままなのに正面がのっぺりした平面顔と言うのがアンバランス。妻面も曲面ガラスが普通のガラス窓になったし、画期的だった強制通風機も平凡なグロベンになり、クロスシート廃止もファンにはガッカリなところ。特徴と言う特徴を全て潰してしまって当時の阪神の美意識と言うのを疑った。

 

3561形になってからは何度か見ている。その後もさらにラインデリア化、3扉化、冷房化と見かけるたびに違う形になっていた。もとの形からはすっかり変わったが最後まで本線の急行仕様から外れることなく赤胴車の一員として1984年まで勤めを全うした。すっかり変わったその姿を見てもファンは往年の姿を偲んで何時の日か阪神に再びクロスシートの特急車が復活することを夢見たものである。
写真はいいのが残っていない。手ぶればかり…あしからず。