名松線未開業区間を行く

JR名松線は松阪と名張を結ぶつもりで建設されたが現在の近鉄の前身である参宮急行に同区間の開通を先に越されたため松阪から伊勢奥津までの開通にとどまった。未開業区間が着工される見込みは全くない。だが現在伊勢奥津から近鉄名張までの間を結ぶバス路線が三重交通の手で一日2往復運行されている。先日名張から奥津までの便に乗ってきた。

 

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近鉄名張駅西口で発車を待つ13時発のバス。おばあさんが乗ろうとしている。乗車したのは私を含めて5人。どうせすることもない。乗り降りする人を1駅ごとにチェックしてみよう。

 

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出発して8分、富貴ヶ丘停留所着。山手だが近くに新興住宅地が広がっている。30代と見られる男性1名下車。運賃210円。

 

この後降りるまで写真撮影はしていない。まあすごい道で車内で立ったり動いたりするのは危険だと思ったからだ。14分経過して西出停留所着。名張川沿いの小さな集落。60代と見られる男性1名下車。運賃320円。

 

やがてダムが見えてきてバスはそれに向かって高度を上げていく。しばらく国道368号上を走り道はいいのだが民家は全くない。そしてまたバス1台通るのがやっとのような狭い道に入り20~30km/hで走る。少し広くなったところで対向の便と交換した。小さな集落が点在するが最近の市制改革でこのあたりも津市に編入されたそうだ。周辺では鮎の川釣りが出来るようで遊漁券、おとり販売の看板あり。

 

さらに行くと路線内最大の峠で分水嶺となるらしい。今まで名張川を上流に向かって走ってきたのだがここから雲出川下流に向けて走ることになる。そして路線は一旦奈良県に入り宇陀郡御杖村という山間の集落を通る。 約1時間弱で榛原から通ずる国道369号線と合流したところで比較的大きな集落のある敷津という停留所に着く。ここでおばあさんと60代と見られる男性計2名下車。運賃は一人850円、ふたりで1700円。近くには「姫石の湯」という日帰り入浴施設がある。降りたお二人はそちらに行かれたのかもしれない。私も機会があれば今度訪れてみたいが往復のアクセスがこのバスではちょっと難しい。隘路をマイカーで行くしかないか。

 

再び三重県に入り後は下りの道である。国道368号線は整備されているのだがバスはそちらを通らず並走する狭い村道?を通る。集落はそちらに沿ってあるのだからしかたがない。約70分経過で終点奥津駅前停留所到着。降りたのは私一人、運賃1010円。途中から乗ってくる乗客はいなかった。
したがってこの便の運賃収入は 
210+320+850×2+1010=3240(円)である。

 

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奥津駅前で休憩するバス。名松線の列車が到着すれば名張行きとしてきた道を戻っていく。

 

ここでこのバスの収益を考えてみよう。運賃収入は3240円だったが消費税分5%を除けば3085円となりこれが純収入である。さて最低限の経費は次のようになる。

 

GOOGLEの「走行距離を測る」というソフトを使うとこの全線距離は約28.5㎞となった。
バスのディーゼルエンジンの燃費3km/㍑とすれば消費軽油は9.5㍑となる。
最近の相場で軽油1㍑あたり135円とすると燃料代A
A=135×9.5(円)

 

運転手さんの月給30万円として諸手当・加算など2割を除き純粋な労賃24万円としよう。
一日8時間勤務で月22日働いたとすると時給換算Bは
B=240000÷22÷8(円/時)

 

三重交通HPによるとこのバスの走行所要時間は69分である。したがって運転手さんの人件費Cは
C=B×69/60 (円)

 

まず最低限目に見える経費は 
A+C≒2851(円)

 

よく分からないがそれ以外に必要な経費もあるだろうし上の値に1割上乗せすればおよそ3136円となる。

 

3085-3136=△51(円) 

 

51円赤字と出た。物好きにも全区間乗った私がいなければ赤字幅はさらに拡大! う~ん厳しい! こりゃ鉄道は走らせられんわ…。

 

乗車2008.5.25

 

参考 Wikipedia名松線三重交通ホームページ、御杖村ホームページ、GOOGLE走行距離を測る