関西1デイパスの旅・その1・汝窯展

北宋汝窯青磁考古発掘成果展
大阪市立東洋陶磁美術館にて3月28日まで開催中

 

11~12世紀の中国、北宋の時代青磁器が多く焼かれた。これらは色、形など完成度が高くわが国でも珍重され神品と呼ばれ茶の湯などで用いられた。いくつかの窯元があってその製法、作風も少しづつ異なっている。その中で大陸のほぼ中央に位置する河南省汝州近辺にあった「汝窯」は優れた青磁作品を作っていたことが様々な古文献で確認されているが今に伝わる伝世品は非常に少ない。しかし中国で近年進められている窯跡の発掘調査で出てきた青磁作品約80点がここに展示されその一端を知ることが出来る。

 

同美術館は京阪なにわ橋駅の前にあり関西1デイパスで京阪にも乗れるのをよいことに京阪で行くことにする。だが京阪のきっぷは最初から付いているわけでなく、一旦JRで東福寺または京橋まで乗りそこの京阪駅で引換券を本券に換えてもらう必要がある。自宅のすぐ近くに京阪駅があるのにそこから乗れずまずは奈良線東福寺まで行く。
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回り道であったが、目的地は本当に駅のすぐそば。駅乗降口を出て信号を渡れば徒歩30秒。以前は淀屋橋か北浜から歩いたものだったが本当に便利になったものだ。

 

観覧料は一般900円だが各種の割引があるので受付で聞いてみよう。私はJAF会員の割引を受けて750円で済んだ。展示は2階である。展示室入り口に立てかけてある看板。この先は撮影禁止。
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入るといくつもの展示品が目に入る。ただ今回の展示品は発掘されたものが中心であるため完品は少なく断片を継ぎ合わせ修復されているものがほとんどである。しかしそれだけを見ても同じ青磁とはいえ竜泉窯や耀州窯で作られたものとは別の世界が広がっている。龍泉窯の色は秘色と言われ宝石にも例えられる美しさだがこちらのものは「天青色」と呼ばれるやや緑がかった穏やかな仕上がりになっている。また龍泉窯においては模様はあまり見られない一方耀州窯のものは陽刻を駆使して華やかな出来になっている。こちらのものはそのどちらでもなく線刻や継ぎ合わせなどを使って動物や草花などを象形化し何気ない遊び心を伺うことが出来る。
ここで気付くことはその色や造形や技法が他の中国国内のものよりもむしろ高麗青磁に近いように感じられることだ。龍や鳥を形取った香炉蓋などは高麗に類品があるし梅瓶の形など高麗のものと見分けがつかないほどだ。もっとも高麗のように象嵌で花弁文や雲鶴文を表現するというのはみられないが、それでもお互いが影響を与え合ったように思えてならない。
大それたことを書けば… この東洋陶磁美術館の所蔵品の大半は安宅コレクションからの寄贈品であり、その収集者の趣味から朝鮮陶磁が多い。それはもはや動かしがたい前提とされてしかるべき鑑定もされているとは思うが、日本統治時代の混迷の中で見出された逸品の出自を今一度検証すれば、あるいはその中から汝窯のものが見つかるかもしれない…という気がした。

 

2010年1月24日訪問