どうするつもりなん? 村上さん

タイガース優勝が近づくに連れて阪神電鉄の株価がうなぎのぼりに上がり9月初旬まで400円台だったのがあれよあれよというまに1000円を越えてしまった。優勝決定が秒読みになるのと連動しての上げだったので当初はご祝儀相場と思われていた。しかし下旬になると1日で100円ストップ高となるありさま。東証一部上場とはいえ所詮は一地方の鉄道会社、企業体力は知れたもの。一昨年の優勝の年も7月始めに428円をつけたのが最高で優勝が決まってからは340円台に落ち着いた。もともと値動きのそれほど大きな銘柄ではなかったのでこれは仕手をかけられたのではないかと思い出した。そうしたら27日になって案の定村上ファンドが全株式の25%を取得して筆頭株主になったことが分かった。十分値を吊り上げて売り抜けるのかと思いきや彼らはその後も買い増しし10月になって38%取得して拒否権も取得した。所有株数からいえば会社のオーナーになったようなもの。すわ乗っ取りかと電鉄側も慌て出した。

他の在阪私鉄がバブルの時代に住宅やリゾート開発で無理をした一方阪神は手を広げることをせず傷を負わずに済んだ。村上氏側はその辺を評価し優良資産の活用による経営参画を求めていくと話した。彼らの要求は主に次の点である。
◎タイガースの株式上場
保有資産の再評価と土地資産の有効利用
これらによる収益率向上で株主への配当を増やすことを求めたと見られる。

さてこの後は一つ目のタイガース株式上場について考えてみる。現在阪神タイガース阪神電鉄の一部門であって独立した企業ではない。タイガースを上場すると言うことはそれを電鉄から切り離して別会社にすると言うことである。阪神電鉄としては球団は高収益を上げるドル箱部門である、否野球が電鉄を支えていると言ってもいいだろう。手放すわけに行かないのが当然である。そもそもプロ野球球団は阪神に限らず企業の知名度アップのための広報・娯楽活動の一環として発生したものだから広告塔のような存在である。広告塔がひとり立ちするのは本末転倒である。トヨタ、松下、サントリーの広告が秀逸であったとてそれ自体が企業の収益を上げるわけではない。むしろ広告を製作する費用の持ち出しとなる。その広告を消費者が見ることにより企業名を覚えその製品を購買する気を起こさせることで収益を上げることが目的である。プロ野球は入場料収入で収益をあげ自己完結しているように見えるが、入場者数が激減して収益が見込めなくなったらどうなる。球団解散の憂き目にもなりかねない。そうならぬよう強いときも弱いときもずっと支えてくれるオーナー企業がいるから選手たちは試合に打ち込めるのだ。阪神電鉄は70年間ずっと球団を育ててきて、またその代わり一電鉄会社が全国区の知名度を得た。それが企業努力というものだ。

村上氏はあるいはタイガースの球団オーナーになりたいのかもしれない。だが彼のようなお金を第一義的に考える人が恒久的なサポートを続ける保障は何もない。成績が下がって収益減になって配当が出なくなったらあっさり身売りするような人間ならば野球を語らないでいてほしい。オーナーとして発言権を盾に好き勝手な球団経営をするならファンの一人のような顔をしないでほしい。