県庁の星

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  桂望実著 小学館 1365円

 

最近映画化され封切られているが、原作とは登場人物のイメージが違う。パート店員二宮泰子は映画の柴咲コウさんのような年下の若い女性ではなく二十歳の子がいるおばさん店員である。青臭い役人と老練な民間の発想の違いをまざまざと見せ付けるにはこうすべきである。映画にはヒロインを置かないと収益にならないからなのか、ああこれこそが民間的発想。役人が指針や方策を文書化させそれに沿って物事を進めかつ前例から外れないように保身を図るのに対して、民間それも地方の末端ではマニュアルもなしにとにかく収益をあげるために動き回る、客に恥をかかせないように頭を下げるだけである。最初聰の目から民間設備のいい加減さ・不備が気になるが、読んでいくうちに次第に泰子のやり方に共鳴をもてるようになってくる。それは泰子が俳句の会によって表面の気持ちをそのまま表すのではなく、下のそのまた下の気持ちをさりげなく詠む事を学ぶことにより県庁さんへの反発、軽蔑、後ろ指から不安さらにその下の激励の気持ちを呼び覚ますことができるようになったことが聰に民間の発想を覚えこませることにつながったからだろうか。1階惣菜売り場でA.Bに別れて弁当の売上競争をすることになったとき彼女は聰が指揮をとるAチームに一票を投じる。最初聰は客のニーズがつかめずAチームの弁当が全く売れない。ある日泰子は聰を町に連れて行く。百貨店にいた一人の女性客がどのような行動をとるかを観察させそこから何をしていけば物が売れるのかを教える。商売とは客が何をして欲しいかを知りそれをタイミングよく供給することなのだ。そんなことはお役所の机に積んである書類からは見えてこない。それが分かれば企画開発は聰の得意とするところ。ただし職場のスタッフに趣旨を理解させともに動くことがとても大切ということを一県職員がスーパーの店の中で学び、やがて売上が伸びていく。他に泰子と息子学の親子関係や聰とあいとの交際などの枝道ストーリーもコミカルに描かれているが、それらが現代の世相を投影させたエピソードとして作品のリアリティーを高めている。

  これは原作を読んだら映画は見ない方が良いような気がする。

私は映画はまだ見てないが原作を十分楽しんだ。