読了図書

カエルの楽園

新潮社 百田尚樹著 少し読めば政治メッセージの強い小説と思えるだろう。現在の日本が置かれている状況をカエルの世界に置き換えて俯瞰している。登場キャラクターや種族が何をたとえているかはかなり明白である。現在の状況に様ざまな見方があることは承知…

七時間半

1960年に雑誌に連載された喜劇作家獅子文六の小説の文庫本化である。舞台は当時東京~大阪を七時間半かけて走っていた特急列車ちどりの特に食堂車周辺の模様を描いている。実相の1960年といえば現首相安倍晋三氏の祖父に当たる岸信介が首相だった時代で、鉄…

昭和の車掌さん乗務録

坂本衛著 宝島社刊 2014年5月23日 第1刷発行 18歳で国鉄に就職し昭和35年から民営化直前の昭和62年までの27年間車掌として職務を全うした著者が職務で体験したエピソードをつづったもの。これまで鉄道関連の雑誌などに掲載された内容を加筆修正の上まとめた…

苦役列車

2011年第144回芥川賞では、朝吹真理子さん(26)の『きことわ』と西村賢太さん(43)の『苦役列車』が受賞した。そのあまりに対照的な二人の作家のプロフィールが話題になったりした。遅まきながらこのたび苦役列車のほうを読んだ。 なぜ鉄道とは離れた内容…

だから混浴はやめられない

山崎まゆみ著 新潮新書 2008.10.20初版 若手といってもいいだろう、混浴が大好きな女性フリーライターの書いた混浴賛歌。このような女性がいるというのを知るだけでも興味津々だが、著者が現在日本に数少ない各地の混浴温泉を訪ね現地の人たちと知り合いそこ…

阪急電車

有川浩著 幻冬社 2008.1.25初版 こんな題名の小説があると鉄は思わず手にしてしまう。しかし帯を見ると「電車は、人数分の人生を乗せて、どこまでもは続かない線路を走っていく-」と書かれてあり混沌とした人間模様が描き出されることを予想させる。果たし…

鉄のほそ道

夏だというのに仕事は休めない。たまの休みの日は雨が降り続く。今朝もいっときずいぶん降った。 こんなときはBOOK OFFなどで買いだめしておいた少し前の漫画でも読んで退屈を紛らわせる。鉄チャンのできないうさを晴らすのに好適な漫画があった。 はしもと…

「巨人-阪神」殺人事件

吉村達也著 光文社文庫 1992年5月20日に巨人-阪神戦が行われている東京ドームの地下駐車場で女子大生が腹を刺されて死んでいた。警視庁は殺人事件の疑いで捜査を開始したが犯人逮捕につながる決め手がない。 所変わって富士山麓にある「恐怖の洗脳工場」と呼…

ローカル線ガールズ

嶋田郁美著 メディアファクトリー刊 本体952円 この本、鉄オタクの間ではすでによく知られていて著者の嶋田さんは今や彼らの間ではアイドル的存在になっているそうだ。しかし私は先日たまたま店頭で並んでいるのを見て初めて知ってその場で買った。 相次ぐ事…

かもめ食堂

群ようこ著 幻冬舎 1238円 3年程前に封切られた映画作品の原作。この映画のために書き下ろされた。 われわれ日本人が連想するフィンランドのイメージは北欧の森と湖の国。日本と同じくらいの面積にわずか500万人ほどしかいない。サウナ風呂、サンタクロ…

昭和天皇・マッカーサー会見

豊下楢彦著 岩波現代文庫 1000円 著者の本来の専門はイタリア政治史である。イタリアはかつて王国でムソリーニ政権下日本・ドイツと共に枢軸国として第二次大戦を戦った。しかし他国に先んじて無条件降伏して内乱となり終戦を迎える。戦後ファシストに協力し…

日本探見二泊三日

久々に宮脇俊三作品を読んだ。彼が亡くなってすでに5年、決して新刊なのではないが読む機会を失していた。今にいたっても鉄道の絡んだ紀行文はこの人の右に出る者は現れていないと思う。 国鉄最長片道切符旅行という長旅を制覇した筆者にして今回は2泊3日程…

天空列車

長岡洋幸/写真 長田幸康/写真 集英社 ¥1600 天空列車とは、2006年7月に開業した「世界で最も高い場所を走る寝台列車」。 標高4000m以上の高原を駆け抜け、聖なる都ラサへと旅人を導く。 中国の西の果てに位置してインド・ネパール・ブータン・ミャンマ…

鈍感力

渡辺淳一著 集英社 1155円 今年のベストセラー本を遅まきながら読んでみた。小泉前首相が政局で自民党の幹部が支持率低下を憂慮している時にこの言葉を用いて広まった。それで自民党の幹部達は鈍感になったのかその後参議院選挙では最低支持率になって安倍首…

回想電車

赤川次郎著 集英社刊 1400円 さらっと読み通してみてこれは浅田次郎の作品かなと思うような作風であるが次郎は次郎でも赤川次郎である。推理小説作家赤川のもう一面を見るような出来である。全体のテーマとしては{人はちょっとしたきっかけがあれば人に優し…

女子と鉄道

茶道、華道、鉄道 ! 女子にも乗れる鉄道入門 酒井順子 光文社 1300円 著者は「負け犬の遠吠え」でブレイクしたエッセイスト。この本の始めには「茶道や華道をたしなむ女性は多くとも、鉄道をたしなむ方は非常に少なく、それどころか軽侮の視線すら時に感じ…

将軍様の鉄道

コアな海外鉄道ファンにお勧めの一冊はこれ! 国分隼人著 新潮社 1900円 DVD付き 謎の多いあの国の鉄道事情、一体どんなものが走っているのか趣味的見地からは興味が尽きない。今までこれだけ克明に詳細に記されたものがあっただろうか。著者の肩書きはトラ…

生協の白石さん

白石昌則/東京農工大学学生の皆さん 講談社 今年よく読まれた本の1つで100万部近い売上だったという。東京農工大学内にある生協で、利用者からのアンケート(ひとことカード)に寄せられた質問・意見に対して生協職員・白石さんがに回答した事例をまとめた本…

忘れる技術

岡野憲一郎著:創元社 入試や資格試験を受けるのを控えている人には忘れるなどとんでもないと思われるだろうが、世の中には忘れたくても忘れられない過去に縛られて苦しんでいる人たちがいる。普通の記憶は時がたてば薄れていく、機能的にはそれが正常なのだ…

城崎にて

山手線の電車にはねられて怪我をした。其後養生に、一人で但馬の城崎温泉へ出掛けた。……兎に角要心は肝要だからといはれて、それで来た。…… 志賀直哉の代表作「城崎にて」はこのような出だしで始まる。私は中学のとき国語で習った記憶がある。そのとき何より…

県庁の星

桂望実著 小学館 1365円 最近映画化され封切られているが、原作とは登場人物のイメージが違う。パート店員二宮泰子は映画の柴咲コウさんのような年下の若い女性ではなく二十歳の子がいるおばさん店員である。青臭い役人と老練な民間の発想の違いをまざまざと…

円満退社

江上剛著・幻冬舎・2005年11月10日第1刷発行 銀行業務に精通した作者がある銀行の一支店を舞台におこる出来事を小説化したもの。 東大を出て大手都市銀行に入り揉まれ続けて勤続34年、家では悪妻にしかれ続けた結婚生活26年。 本日都内の支店長として最…

強迫性障害は治ります!

田村浩二著 ハート出版 1300円 ある体験者の苦悩と快復した喜びの報告 強迫性障害とは不合理あるいは無意味な思い込みに本人自身が束縛されて、不可解な行為を繰り返したり続けたりする症状といえよう。自分自身が不愉快・不都合・恐ろしいと思えるような考…

世界一周!大陸横断鉄道の旅

櫻井寛著 PHP新書361 2005.8.31刊行 800円 著者は写真家として世界を旅しているが、もちろん鉄道の愛好家である。世界には日本では味わえない長距離を走る列車がある。アジア、北米、オーストラリアの各大陸を3泊以上かけて走る大陸横断列車だ。ここ…

金かえせっ! 実録 ネット詐欺との死闘

中島慎一著、BananaRun構成・文 宝島社発行私が今書いているこのブログはYAHOOのもので、私もYAHOOの便利性を享受している一人である。様々なサービスを利用すると家にいながら様々な人と出会えるのが生活の楽しみにすらなっている。その中で善良な出会いや…

日本が子供たちに教えなかったこと

著者 金美齢(JET日本語学校理事長) 出版社 PHP研究所、初版発行 2005.4.29 、1400円 著者は長年日本に暮らした台湾国籍の人である。日本の教育を受けて日本の教壇に立ち台湾をはじめとするアジアの人たちのために日本語学校を立ち上げた人である。戦後の…

「心理テスト」はウソでした。

発行 日経BP社、著者 村上宣寛(富山大学教育学部教授)、初版2005・4・4 心理学を専門とする学者の書いたもので心理テストがウソだったなどと言われると一般人は驚いてしまう。入学・就職・免許取得・検診などの度に受けてきた性格判断はなんだったんだろう…