女子と鉄道

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茶道、華道、鉄道 ! 女子にも乗れる鉄道入門

  酒井順子 光文社 1300円

著者は「負け犬の遠吠え」でブレイクしたエッセイスト。この本の始めには「茶道や華道をたしなむ女性は多くとも、鉄道をたしなむ方は非常に少なく、それどころか軽侮の視線すら時に感じることを、私は非常に残念に感じるものです」と負け犬ではなく堂々と言っている。鉄道という誰の目にも普遍的な物体を愛し楽しむという行為がどこか人目をはばかるような存在であるのがなぜなのか上手く言葉で説明できない。けれどスポーツや稽古事とはどこか違う趣味なのは明らかだ。そのやり方を人から伝授してもらい、そのルールに従って何人かの仲間と共同で取り組みあるいは競争する。そうして得た勝利・昇段の喜びをみんなで分かちあうことがこれらの趣味の至上のものとされ、それは日本社会に受け入れやすいものだったということは言えるだろう。一方で鉄道趣味はその楽しみ方にルールがあるわけでなく一人一人が自分の楽しみ方をすればよく師匠も必要なければ免状も不要というきわめて捕らえどころのないところが女性をして趣味と認めにくいのであろう。体育系の人たちは鉄研漫研はダサくて暗くてもてない人の集まりであり、彼我が交わりあうことは未来永劫ありえないという認識をもっている。著者もまたかつて大学時代に体育会系のクラブに入って内に鉄道が好きという思いを持ちながら仲間内では「テッケンとかって気持ち悪いっすよね!」などと言っていたという。人目を気にする女性には本当は好きな鉄道をカミングアウトする機会を見つけられないのであろう。でも鉄道が好きと公言する女性も結構いる。彼女達の書いているブログを訪れればそこに集まる同好の女性もまた多い。この本を読んで鉄道を好きとはばからずに言える女性が増えることを望む。
ただ入門者にとっては〇〇鉄道とか××線という固有名詞の次々出てくるところでドロップアウトする人もいるかもしれない。それと痴漢の記述は鉄道趣味本にはあまり入れて欲しくない。