ロイヤルコペンハーゲン展を見て

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現在大阪東洋陶磁美術館で開催中の「デンマーク王室の磁器コレクション-ロイヤルコペンハーゲン」を見てきた。西洋のものを東洋陶磁美術館で行うのも変だが、陶磁専門の美術館と言うと関西ではここが随一だしロイヤルコペンハーゲンも時期によって中国陶磁や浮世絵の影響を受けているからあながち的外れでもない。

1775年創設というから日本で江戸中期田沼意次の時代であり、すでに日本や中国で多数の陶磁器の生産が確立されていた。近世西洋の磁器の発祥はほとんど王室や貴族の中国景徳鎮製品への憧れから始まったといえよう。王室ご用達となったコペンも例外ではなくしばらくはその模倣だった。初期は青花文の「ブルーフルーテッド」が作られる。

が、圧巻はデンマーク王室で今も使われている「フローラ・ダニカ」である。18世紀終わりに王室の命により編纂されたデンマーク国内に自生する植物の総覧「フローラ・ダニカ」に載っている植物の図柄をそっくり王室の食器類に描かせた総数1800余に及ぶ作品群である。まずはその写実性に驚かされる。ダリアとかチューリップとか名の知られた品種でなく野山に生えている名も無い種を皿をカンバスのようにして描かれている。花や葉だけでなく根の部分まで描かれているのはややカルチュアショックだが、美しい花を咲かせるためにこのような根を大地に根付かせる必要があるのだと教えられるようであった。欧米人の哲学であろうか。フローラ・ダニカは今も1500以上のものが王宮に保管され晩餐会の卓の上を賑わせている。

19世紀になってジャポニズムによって新しい息吹を与えられたブルーフルーテッドが現れる。明らかに北斎や広重の浮世絵の影響と見られる図柄がある。それらのぼかした色合いの表現に釉裏彩という技法が多用される。発展すると写実的な風景画なども作られている。これが今日のロイヤルコペンハーゲンの作風につながっているものだと感じた。その底流にジャポニズムがあることに親近感を感じた。しかし彼らは迎合はしていない。表現力のこまやかさには敬服する。