映画「旅の贈りもの0:00発」を見て

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先日一日乗り放題旅行中に乗った電車の車内にこの映画の広告が掲示されていた。JR西日本が撮影協力したといい、広告には茶塗りのEF58150の写真が出されていた。これは鉄チャンとして見逃せないと思った。だが京都での上映期間は20日まで、しかも一日1回午前中だけ上映。独立プロ製作の作品なので大手の配給には乗らず京都シネマという小さな映画館で上映されていた。さいわい本日休暇をとることができ見に行くことができた。平日の午前から映画を見る人など少なかろうと多寡をくくっていたら席は9割方埋まっていた。最前列に空席を見つけて座ることができた。

 

偶数月の第3金曜日0:00に大阪駅を行く先不明の列車が発車する。自分を必要とする人間がいないと言う悩みを胸にその列車に乗り込んだ高校生華子。似たような思いで乗り合わせた男女5人が行き着いた先は風町という小さな港町。一見何もないと見えたその町で出会った人々の心に彼らはそれぞれに探していた何かを見つけていく…というお話。シナリオ設定では日本海沿いの海辺の街と言うことになっているがどうも瀬戸内地方の情景のようだ。そのせいかどこか大林宣彦監督の作品のような印象を受ける。

 

桜井淳子、多岐川華子徳永英明太平シロー大滝秀治細川俊之正司歌江、とよくこれだけ多彩な芸風の顔ぶれを集めたなというのが驚き。徳永が映画出演と言うのが驚き。およそ医者には見えないが、パターナリズムな親切を与える往年の医師の姿を不快には思えない。この映画のテーマ曲も担当している。太平シローは久しぶりに見たがリストラされたサラリーマン役とはハマリである。素でやっているのと違うか。大滝秀治はすっとぼけた飄々とした役は天下一品でこのような郵便局長(特定局であろう)見たことがあると思わせる。しかし防波堤の上に立つなんてできるとは足の力はまだじょうぶと見た。細川俊之は妻を失い感傷旅行に出る初老の男役でこの人もこんな役をする年になったかと思わせる。ただこの映画の中での存在感は他の男優よりは希薄で男やもめの物悲しさが今ひとつ伝わってこない。これは細川のキャラを十分生かしきれてないシナリオ的な問題と思う。

 

旅の出会い、ふれあいというものをやや誇張気味に描いたのも悪くない。旅の醍醐味を味わうことはできるしこんな旅があったらいいなと思わせる。また旅は日常から離れる事によって初めてできることなのだ。だから日常生活を放ってしまう、日常への回帰を忘れてしまいそうになる怖い一面もある。帰るところがあってこそ旅に出ることができる。そんな一面がこの映画の中で垣間見えたのも興味ある点だ。しかしストーリーに意外性が見られないまま話が進んでいくように思える。もう一工夫ほしい。鉄道旅行の定番の歌といえば「いい日旅立ち」。中森明菜がエンディングで歌うのがとてもいい。百恵ちゃん以上とすら思える。

 

この映画に協賛して、ロケ地瀬戸内の珍味を詰め合わせた「旅の贈りもの弁当」を映画館の近くの百貨店で売り出していた。竹の皮のつづらの容器という凝りよう。映画で弁当そのものが出てくるわけではないけど採れたての鯛やたこの刺身をあてに皆で飲んで食べてという場面を思い起こせばまた一味違う。かつて鉄道旅行の車内食の定番だった冷凍みかんもついていて懐かしさに浸れる。その弁当の写真も出しておこう。