フータくん

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人生カネに感ず! 人間いたるところギンコウあり! ゼニは涙か溜息か! ドタバタアチャラカ脱線すれども、タダでは起きない藤子不二夫のマンガ精神。拍手するヒマがあったら、ニ、三冊まとめて買ってチョーダイ。(カバー裏表紙) 

 

合作時代の藤子不二夫作品の一つ。1960年代中ごろ今はなき少年キングに連載されていた。時代的にはオバQと同時期の作品であるがコンセプト的にはそれとは一線を画しているように思う。オバQからパーマンドラえもんと続く一連の作品のように人間とは違う主人公の周囲に数人の子供キャラクターが存在してストーリーを展開していくのとは異なるからだ。フータ少年は一人風来坊な無銭旅行を続けて百万円をためることを目標にしている。その先々で変わった人物と出くわして金もうけのネタにしていく。各巻の最後には貯金額が示されて百万まであといくらかがわかる。

 

小さな子供には「空を飛びたい」「知らないところへ行きたい」「嫌な奴をやっつけたい」という願望が強いだろう。そのような夢をかなえてくれる人間の能力を超えた生き物が存在することをこれまた夢見る。「オバQ」から「ドラえもん」は子供をして正太やのび太を自分に置き換えてそのようなニーズにこたえてくれる作品として多くの子供に受け入れられた。一方子供たちは知らないところに行きたいとは思っても無銭旅行をして行こうとは考えないしそれが楽しいことだとは感じられないだろう。だからフータ少年を自分に置き換えることはできない。むしろ身の回りでは起こりえない世界を覗き込むような感じでこの作品を読んでいたような気がする。それでかこの作品ではカネのことやブラックな笑いあるいはオタク的な味付けが垣間見えてストーリー展開もややシュールなものがある。

 

こうしてみるとこの作品、合作とはいえ事実上藤子不二夫A氏の手になるものであると気づかされる。この作品のテイストが後の「魔太郎が来る」や「笑ウせえるすまん」に続くように感じるのだ。