声優田の中勇さんを惜しむ

1月13日 声優の田の中勇さんが東京世田谷の自宅で死亡しているのが家族に発見された。享年77歳。後日親族の手により葬儀が行われる。

 

田の中さんの声優としての活動で最も知られているのは「ゲゲゲの鬼太郎」の目玉おやじの声であった。男性としては甲高いしかし飄々とした声は他には代えがたいもので1968年以降ずっとマイクに向かっていた。死去と知ってどのような風貌だったのか見ようとHPを開けてみたら目玉は二つある年齢よりは元気そうな姿形だった。
http://www.aoni.co.jp/actor/ta/tanonaka-isamu.html
あの声も地声ではなく作り声で普段は普通のおじさんだったようだ。しかし田の中さんと聞くと多くの人はあの役声が本当の声だと思ってしまうから声優冥利に尽きるのではないか。

 

もちろん目玉おやじがはまり役であったことは疑う余地がない。しかしわたし的にはそれより印象深いのはTVアニメ初代「オバケのQ太郎」の正ちゃんのパパ(大原正助)の声だった。飄々としてどこかユーモラスな声は主役の声にも劣らず耳に残りオバQという作品のホンワカしたイメージを形作るのに大きく寄与したと感じる。この作品では正ちゃんの兄伸一がいてその声はやはり鬼太郎の声として有名な野沢雅子さんだった。2人は期せずして二つの作品で親子を演じたことになる。その2人個人的にも親しかったという。

 

そしてもう一つTVアニメ「天才バカボン」の目玉のおまわりさん役もわたし的に印象深い。田の中さん、どうも目玉つながりの役に縁があったようだ。「逮捕する!」といって拳銃をぶっ放すしぐさはあの声を抜きにしては語れない。この声や目玉おやじの声はものまねの対象としてよく使われた。わたしもやってみたことはあるけれど易しそうでけっこう難しく似ているとは言われにくかった。普段低音の男子があのような甲高い声を出してもよく通る澄んだものにならない。年を取るほどますますそんな声は出にくくなってくる。そんな声を何十年も作り続けてこられたのは驚愕に値する。

 

その他いくつかCMでも声を聞いた記憶がある。しかし目玉おやじの声とは微妙に違っていたと思う。食品の広告に妖怪の声では消費者が引くかとプロとして工夫されたのだろう。それぞれにいい味を出されていた。

 

田の中さん直前まで体調の変化も訴えることなく過ごされていたそうでいささか突然なことだった。ところが初代オバQ曽我町子さんも先年他界している。
http://blogs.yahoo.co.jp/d19756236/35089357.html
このアニメ放映もかれこれ45年も前のことになる。ずいぶん昔のことになったものでそのころ一線で活躍していた人たちが次々と旅立たれる時代になったかと改めて感慨を覚える。ご冥福を祈る。