半魚人

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夏といえばホラー。ホラーといえば楳図かずお。となるが、私はそもそもホラーものにはそれほど関心は無い。だがこの作品は初めて見たホラー漫画という意味で印象深いものである。楳図の前にはホラー漫画というものは確立していなかったと思う。これは確か1966年ころ発表されたが、当時にしてはタッチがおどろおどろしく漫画が恐怖感を覚えさせるメディアであることを初めて知った。人間の少年がだんだん魚のような姿に変わっていくのがゾクゾクさせた。特に84ページ目巻頭に描かれる変わり果てた「健ちゃん」の姿は子供の目には大層ショッキングであった。本当に夜も眠れないほど。当時社会問題化したサリドマイド児の報道を見て楳図は構想を思い立ったと見られる。人の心の不安は生命の変形をももたらす恐ろしさを持っていると作者は語りたかったのであろうか。
地球温暖化で海水の水位上昇が現実問題となった今、不安におびえても人類はこの漫画のようには海に帰れない。人間自らが招いた温暖化を何とか阻止させることが人間に課された仕事である。