どこにでもありそうな病状

最近ひきこもりだった青年の体験手記を読んでいる。それによるとその初めの症状はこんなものだったという。「ある考えや感情が浮かぶと常にそれと正反対の考え方や感情が同時に浮かぶ」そのために他人が面白そうにしているのを見て自分も面白いと思うのにもかかわらず、即座に面白くないとぴう感情が沸き起こり面白くないという表情が顔に表れるそうだ。自分の正直な気持ちを表せずに人に誤解を与えてしまうために友人との人間関係にひびが入る。ここからどんどん病状が進んでいくことが書き綴られている。

これを文面だけ読んでいるといかにも病的な状態に思える。しかし果たしてこの人だけの特異な問題だろうか。もしかしたら誰でもなっていることかもしれない。
たとえばこんなことはないだろうか。学校・職場・地域である人に対して「この人と仲良くなりたい」と思うこと。でもその人に対してそのままそう言えるだろうか。もし思ったままのことを言って受け入れてもらえなかったらどうしよう。かえって嫌われるかもしれない。こちらがいづらくなるのは辛い…。はじめに思った感情とは裏腹にその人に対して笑顔も見せずにそっけなく接する。ごく事務的な話だけで終わってしまう。…私が言いたいのはそんなことじゃないんだ、と思っても体が素直になれないのだ。こうしてみすみす相手が目の前にいながら仲良くなる機会を失ってしまう。

言いたいことが言えないというのはほとんどの人が経験したことであろう。引きこもりの最初はそんな誰にでも起こるべきことなのだ。それを病的なものと思い込んでしまうことから人間関係の拒絶が始まるのであれば、恐ろしい勘違いだ。最近表情が乏しくなったり暗くなってきた友人が身の回りにいる人はそれが引きこもりの始まるサインだと言うことを気づいてあげてほしい。そしてそれが誰にでもある生理的な反応であると諭してあげてほしい。あなたの大切な友人が別世界に入り込んでしまわないために…。