地下鉄に乗って

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また鉄ちゃん心をくすぐるようなタイトルの映画封切りである。そしてこのタイトル1970年代のフォークソングブームのころ猫というグループが歌っていた曲名とも同じである。何か関係があるのかなと50歳のオヤジは気になって見に行くことにした。観客は5分の入り。若年層が多い。オヤジが見に来る映画ではなかったか。話が昭和39年3人兄弟がキャッチボールをしているところから始まる。そこへ突然帰ってくる怖い父親の威厳。おっ、これは見られるぞとのめっていくと地下鉄丸の内線の荻窪開通の時の新中野駅。やってきた地下鉄電車は300形、と思ったら東西線の5000形を丸の内線の旧塗色にしたものだった。鉄ちゃんはここで思わずのけぞってしまった。浅田次郎原作の鉄ものといえば鉄道員(ぽっぽや)。あれもキハ40をキハ12に見せかけた車両が出てきて笑ったっけ。その涙ぐましい演出には脱帽するが、ハリーポッターで往年の蒸気機関車が旧型客車を引いて走っている場面のリアルさにはやはりうらやましさを覚える。さて本題に戻って舞台が現代に戻って主人公真次が登場。先の3兄弟の2番目が長じた姿である。役者は堤真一、3丁目の夕日ALWAYSに続きまた昭和30年代が背景の映画での主演となった。またここでなんとなく笑えた。真次が永田町駅で偶然恩師に出会ってから時間の流れが前に後ろに大流転していく。駅を降りると昭和39年の新中野に迷い込む。そこで見る兄の事故死、父親との確執。一旦現代に戻り弟から父親の危篤を知る。そして今度は恋人みち子とともに地下鉄に乗ってタイムトリップ。さらにさかのぼった時代での若き日の自分の父親、みち子の母親に出会う。一条の糸のような地下鉄の線路が織り成す人間模様は複雑に絡み合い思いもしない絵柄を編み出していく。源氏物語でも読んでいるような意外な結末である。オムライスが食べたくなるよ。

 

面白かった。しかし一つだけ言わせてもらえば近年映画でよく見られるようになった昭和30年代への懐古はやや食傷してきた。その時代を貧しくも優しく力強い時代という設定がちょっとしつこい甘さのように感じられるのだ。決して今よりいい時代だったことはない。良くなかったことは忘却の川に流し去ってきただけだと言うことを心に留めておかなくては。