姫路文学館特別展「鉄道と旅と文学と」

明治5年にわが国に鉄道が開通して以来古今の作家たちがその作品の中に鉄道を登場させて話に叙情や重みを持たせている。あるいは作家自身が鉄道をこよなく愛して鉄道紀行を題材とした作品が今や文学の一角をなすところまで来た。世は鉄道ブームという。そのブームが興った一因は文学作品によるところが大きいだろう。そんな現状において特にインパクトの大きかった作品に出てくる鉄道の姿をジオラマ、写真、絵画などで表現して理解を深めようという試みのなされた催しが姫路市の姫路文学館で行われている。今般見に行ってきた。

 

施設入り口
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姫路駅からは北西の方角、駅からシャトルバスが出ていて10分くらいで着く。
姫路城からは目と鼻の先

 

建物入り口
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新車に置き換わる181系特急「はまかぜ」をバックに記念撮影はいかが

 

館内はいろいろな文学作品に登場する鉄道を紹介しているが、やはり宮脇俊三の「最長片道切符の旅」のコーナーに圧倒された。想定外のルート設定に驚く。この当時は四国にも立ち入れたのがうらやましい。あの作品には写真は添えられていないがそれでも情景がイメージできるのは詳細な原稿やメモが記されていたからで、それが文学の一ジャンルと認められる端緒となったといえる。
これにはジオラマはなかったが、他コーナーのジオラマも目を見張る。

 

宮沢賢治銀河鉄道の夜
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この特別展の案内チラシにも載せられたJR釜石線宮守川橋梁。賢治のころには岩手軽便鉄道だったが地表から見上げた鉄道はさぞ天空を駆ける魔法の乗り物に見えたことであろう。

 

三浦綾子塩狩峠
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この小説は明治時代の実話を基にして書かれている。雪が降り積もり曲線と勾配が続く難所で機関車が空転して坂を上りきれないこともあったという。勾配途中で止まってしまうと再び動きだすとき無理な引張りがかかって連結器が外れてしまう恐れもある。

 

蝉丸「百人一首・逢坂の関」
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まさか蝉丸の時代に鉄道は走っていないが、蝉丸が歌った逢坂山には現在京阪電鉄京津線が走っている。
上りの電車に乗る人と下りの電車に乗る人が知り合いであろうとなかろうとこの峠ですれ違って出会っては別れそしてまた出会うという業を繰り返している。鉄道が他の交通機関と違う特色はレールの上を走る限りいつも同じ時間にまったく同じ場所を走ることといえる。今日別れても明日また出会える可能性が一番高い乗り物かもしれない。

 

それほど大規模な催しでもなかったが、それぞれの熱のこもった展示品に見入って結構時間を費やした。鉄道模型展示運転もあり模型ファン必見。
ただ、純文学には入らず意図的に割愛したのかもしれないが推理小説について触れていないのが疑問に思った。松本清張「点と線」や「ゼロの焦点」などの舞台も紹介してくれればなおよかった。

 

2010,10.31訪問  11月28日まで