いつの日か

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7月26日付京都新聞によると、/「びわこ京阪奈線(仮称)鉄道建設期成同盟会」(会長・嘉田由紀子知事)の総会が25日東近江市で開かれた。同線は米原市から湖東・甲賀市を経由して京都府南部へ至るルートを想定。同盟会は1989年に結成され県内の沿線5市5町などが近江鉄道信楽高原鉄道と連携して実現を目指している。約60人の出席者で「構想実現に向け機運醸成や条件整備に取り組むと決議した。/ とある。

 

この構想自体は古くからあり湖東地区は近江商人発祥の地として古くから栄えた地でありながら東海道からも中山道からも外れサブルートに甘んじ明治以降鉄道が開通すると東海道の宿場町だった水口などはメインルートから外れかえって衰退した。この地区のメインルート昇格は沿線住民の悲願だった。そもそも信楽高原鉄道の前身である国鉄信楽線は西南へ延伸し関西線加茂と結ぶ予定だった。鉄道開通までのつなぎとして国鉄バスの運行があった。しかしこのルートの不運は京都・滋賀・奈良のどこの府県庁所在地からも外れていることだ。いつの時代にもインフラ整備は中核都市の後塵を拝することになり信楽以西の鉄道建設が着工されることはなかった。やがて信楽線第3セクター化されバス路線もJR化を経て不採算路線整理のもとに廃止されてしまった。もはや国レベルでの期成は望めなくなってしまった。

 

しかし時代の推移により京阪奈3府県にまたがる丘陵地が学研都市として整備され各方面の教育機関、研究機関や関連企業がやってきた。そのアクセスも既存鉄道の改良により京都・大阪・奈良からの移動は便利になったが東方面からのアクセスはいまだできていない。そのため鉄道を関西線加茂ではなく京田辺方面へ結ぶほうが有利になった。そのルートに並行して国道307号線が通っているので鉄道もあれば一層便利だろう。ある程度国家事業としての整備が再び見込めるようになった。こうして期成同盟会はわずかな可能性に一縷の望みを託すべく結成されたが前途は決して容易ではない。

 

目下近畿での鉄道関連の国家プロジェクトといえば東海道リニア新幹線建設、そして北陸新幹線延伸があげられよう。まずはこの二つに優先的投資がなされるのは避けようがなくびわ京阪奈などへの出資は二の次であろう。何より信楽線、バスとも不採算による撤退があった事実がこの地への鉄道建設を踏みとどまらせている。技術的にも京滋府県境にある裏白峠トンネル建設、そしてそれを挟む両府県の大きな高低差は大掛かりな工事が予想される。大規模学研都市出現とはいえ少子高齢化、頭脳海外流出などにより今のまま続くかどうかはわからず輸送需要もコンスタントとは言えない。とはいえ早期着工に一つ希望があるとすれば、昨年建設凍結が解除された新名神大津JCT城陽IC間が鉄道計画ルートと大体重なることである。この高速道建設に沿って抱き合わせ工事をすれば、予定路線より大津への迂回をすることにはなるが、日の目を見る可能性は大きくなると思う。

 

そんな現況でも沿線自治体で構成された同盟会の熱意が冷めていない証となるような企画がある。同会が近江・信楽高原両鉄道に呼びかけて発売しているフリーきっぷである。先日近江鉄道の駅でチラシを見つけ手に取った。土日祝に両鉄道が一日乗り放題で1000円となるものだ。両鉄道だけの企画でこの値段設定は苦しいもので多分に同盟会の補助があるものと推測する。ファン的に面白い切符ではあると思うがやはり信楽まででは用途が限られる。また先日経験したように近江鉄道内、両鉄道間の接続が良いとはいえず使い勝手にも疑問が残る。やはり新線建設に着手するならまず既存路線内の接続改善、できれば直通運転を実現させてこそより強いアピールができるのではないだろうか。